環境関連

メタノールの市場性

(1) メタノール需給の現況

  メタノールの需要はほぼ一貫して増加傾向にあるが、新規プラントの稼動開始が1997 年以降続いており、供給は過剰となってきている。

  1998 年の世界の生産能力は35.6 百万トンで、需要は25.6 百万トンである。日本の需要は1.9 百万トンで全て輸入しており、主たる輸入元は中東、オセアニアである。近年はプラント規模の大型化が進み、天然ガス価格が高騰していることもあり、小規模プラントの休止が相次いでいるが、供給過剰を解消するほどの規模にはなっていない。

  メタノールは、それ自体が化成品として消費されるが量的にはごくわずかであり、大半はホルムアルデヒド、MTBE 、酢酸等さまざまな化成品の原料として消費されている。燃料用としてはボイラー用燃料、自動車用燃料等の利用が考えられるが、ボイラー用燃料としては発熱量が低い等から普及が進んでいない。自動車用燃料としてはオクタン価が高いものの発熱量が低いので燃費が悪くなる傾向がある。また、セタン価が5 程度と低いのでディーゼルエンジンには向かない。メタノール自動車はわが国では低公害車に区分されているが、取扱時に毒物・劇物取締法の規制を受けることもあって普及が進んでいない。

  メタノールの市場はある程度の規模があり、地域的な需要が確保されれば小規模なものは立ち上げ可能であるが、積極的に天然ガスを利用するという観点からは燃料電池等の新たな利用技術の確立による新規需要の確保・拡大が必要である。

  現状技術の成熟度は、以下のように整理される。
・製造技術:製造技術は確立されている。
・輸送技術:確立されている。
・利用技術:利用技術は既にあるが、多量の需要を確保するためには、燃料電池等の新たな利用技術の開発が必要である。燃料電池自動車用燃料としては、ダイムラークライスラーは実用化に近い車両を完成させ、各国で走行試験を行なっている。ただし、トヨタ、GM のグループは燃料電池自動車用の燃料としてガソリンの利用を考えており、わが国では経済産業省を中心にガソリン等の石油系燃料を推す声が強い。

  (2) メタノールの課題

  メタノールの場合は、技術的には確立されており、メタノールガスタービン発電、燃料電池、メタノール自動車、一部実用化あるいは実用性が確認されているといえるが、コスト競争力が問題である。その他の課題としては、以下のようなものがあげられる。
・メタノールは化学用としての比較的高めの価格形成が完成しており、燃料用メタノール独自の価格形成は困難。
・メタノールは熱量当たりでLNG と比較して常に高値であり価格の変動幅も大きいため、燃料として競合は困難。
・メタノールの燃料電池自動車用燃料としての課題は、高出力化・小容積化・軽量化による出力当たりのコスト低減が必要。
・他の低公害車と競合。
・メタノールスタンド等のインフラ整備。
・メタノールを輸送用燃料として普及させるための法制面の問題点は、・「毒物及び劇物取締法」により劇物に指定されているため、燃料油の販売と比較して厳しい規制・義務が発生。
・標準品質規格の設定と認定・維持制度の整備が必要。
・税法(課税)の整備が必要。
・備蓄義務の検討が必要。

  (3) メタノールの市場性

  メタノールは、価格的に競合が厳しいという評価が得られた。実用の点では既にわが国でメタノール自動車としての導入がなされ、全国にメタノール供給用エコステーションは14ヶ所(簡易スタンド35カ所)存在する(平成11年8月末現在)が、メタノール自動車は300台程度しか無いため、いずれの設備も休眠状態にあるのが現状である。将来需要としては、燃料電池自動車用燃料としての技術開発の状況を注視する必要がある。これら既存のメタノール供給インフラを活かして燃料電池自動車の試験的導入を実施し、性能の確認、流通面での問題点の把握を行い、対応策の検討を行なうことが可能であろう。なお、このような試験の実施に当たっては、当面各エコステーションの運営に採算性が期待できないことから、国あるいは地方自治体の導入インセンティブが要望される。