環境関連

自動車用燃料としてのメタノール

メタノールは、天然ガスや石炭などからGTL技術を用いて製造したり、またバイオ技術を用いてさまざまなバイオマスから製造することができ、いずれにせよ現在すでに製造方法は確立しているといえます。現在世界中のメタノールの約70%は、安価な天然ガス(メタン)から製造されています(GTL技術)。

  1 メタノールを自動車用燃料とした場合にはどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきます。

(1) メリット
・オクタン価が高い(メタノール=106、レギュラーガソリン=90、プレミアムガソリン=100)
・常温・常圧のもとで液体状態にあるため、扱いやすい
・含酸素燃料のためディーゼルタイプでは、黒煙(PM)を排出しない
・バイオ生成の余地がエタノールよりも広い

(2) デメリット
・発熱量が小さい(ガソリンの約半分)=燃費が悪い
・セタン価が低い(メタノール=3、軽油=50)=ディーゼルエンジンに不向き
・腐食性が強い=エンジンの耐久性を弱める
・水に溶けやすい
・ゴムが劣化する=エンジンの耐久性を弱める
・気化潜熱が大きい
・沸点が64.4℃
・不可視炎性である
・取扱時に毒物・劇物取締法の規制を受ける
・発がん物質とされるホルムアルデヒドを排出する

  2 メタノールの使用法

  メタノールをガソリンに3%程度混ぜて使う方法と80%以上混入した高濃度混合燃料で使う方法の二通りが考えられています。3%程度の混入なら現在使われている自動車にも使用可能ですが、高濃度混合燃料だとエンジンにさびが生じたりするので専用車の開発が必要になります。

  東京都がガソリン・エンジンを改造したライトバンで行った路上走行実験では、排ガス中の窒素酸化物量がガソリン車の4分の1に減少しました。黒煙も出ません。

  メタノールは、天然ガスや石炭から比較的簡単に合成できるので資源量も石油を上回るとされています。ただ、メタノール自動車は燃費効率が悪いうえ、発がん物質とされるホルムアルデヒドを排出する欠点などがあります。エンジンの耐久性でも問題があるため、自動車メーカー各社の開発熱はかつてほど高くないといえます。

  3 なお、エタノールの性質もほとんどメタノールと同様ですが、エタノールはメタノールと比べてバイオマスの範囲が狭いこと、劇物ではないのでエタノールのような取扱上の不便はない点などが異なります。