環境関連

軽質軽油について

低硫黄軽油の導入が急がれていますが、実は、硫黄分50ppm以下の軽油は、以前から軽質軽油という名前で寒冷地用に供給されていました。もちろん、2004年から供給予定の低硫黄軽油とは作り方が異なっています。軽質軽油は、軽質化された、つまり灯油成分を多く含む軽油です。灯油は硫黄分が80ppm以下と決められており、もともと軽油より硫黄分が1桁少ないものです。灯油のように灯芯を使うことが前提となっている燃料には、カーボンや硫黄が少ないことが必要条件だからです。

  またベンゾピレンなど有害な芳香族系炭化水素(アロマ分)や、PMを発生しやすい重質成分を除いてあることもクリーンな理由になっています。カロリーは普通の軽油より低めですが、ボルボ社のテストではNOxが10%、PMを30%低減できるという。

  ヨーロッパではシェル石油がスウェーデン政府の税制優遇措置を受けて「シティ軽油」という名前で生産しており、スウェーデン国内だけでなく、ロンドン市内のバスにも使われています。通常の軽油より10円程度高めです。

  軽質軽油は灯油分が多くて凍りにくいため、寒冷地向けの冬季限定燃料として販売されていました。これを低公害燃料として捉えて、さらに精製した軽油を試験的にバスやゴミ収集車に使っているのが、長く大気汚染で苦しんできた川崎市です(実験的に提供しているのは日石三菱)。

  川崎市のテストでは、軽質軽油の使用によりPMが26~31%低減されたため、市バスとゴミ収集車でさらにテストしたところ、軽質化が進んだ燃料ほど効果が大きかった。スモークメーターを使って測ったところ、市バスで最大75%、4トンゴミ収集車で最大57 %もの低減効果がありました。

  また、市バスにDPFを導入してPM1kg を低減する場合と、軽質軽油を使った場合とのコストを比較すると、軽質軽油がリッター10円アップの場合で約3分の1 、15 円アップの場合で約2分の1と、軽質軽油のほうが優れていました。

  川崎市では軽質軽油のデメリットとして、供給量に限界があること、軽油と比べて高いこと、燃料効率が多少落ちることを挙げています。冬季は灯油の需要が高くなるため、年間を通じて多量の軽質軽油を供給できないことがネックです。

  2001年1月、川崎市に日石三菱から試験的に供給されたのは月150キロリットルで、市バス・ゴミ収集車約150台の燃料となりました。